勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

コロナの時代を生き抜く  
~それぞれの良い点をとりいれ繋がっていくこと~

 台東区の風物詩といえば毎年5月に開催される三社祭が全国的に有名ですが、ご存じのとおりコロナ禍の影響で5月開催はみおくられ、10月17、18日に省略した形での式典が行われました。全国の祭りバカが結集するお祭りで、神輿をかつぐためにぎゅーぎゅーつめになる様を想像するだけで鳥肌がたちどうなるのだろうと心配しておりましたら、トラックに神輿をのせて町中を巡回していました。まさにニューノーマルだと思った次第ですが、来年はどんなスタイルになるのでしょうね……。

 さて、樋野興夫先生が提唱されている「がん哲学外来」は全国200を超えるカフェ数となり、それぞれが地域の風土をいかした方法で特色ある活動を展開されています。「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、東京都台東区(浅草)で展開され昨年10周年を迎えました。台東区のシンボルといえば、昔は上野動物園や浅草寺と答える人が多かったようですが、最近は、隣接する墨田区所在ですが隅田川の台東区側からも威風堂々たる姿をみせる東京スカイツリーを連想する人が少なくないのではないでしょうか。富士山は静岡県側と山梨県側のどちらから見たほうがすばらしいかと両県民の口論の対象となるようですが、台東区と墨田区間では同じような例はないようです。

  4月からリアル開催ではなくオンラインで継続されているがん哲カフェは、三社祭の翌日、10月19日夜(19時開始)に行われました。4回目ゲストは、福井済生会病院副院長で、同病院内で「浅井三姉妹記念 福井がん哲学外来」を主宰されている宗本義則先生。ちなみにこのカフェは福井県で唯一の存在で浅草と同じ10年の歴史を持ちます。この日は、「理想的なカフェとは ~多様性の享受~」についてお話していただきました。

 がんに罹患する人は2人に1人といわれる時代。がんになったら、ほとんどの方が自身が選んだ病院や医師による納得の治療を受け、通院や入院などの方法で闘病されます。個人差がありますが、細胞の一部ががん化する病気のためすっきり寛解とはならず、体内にがんを残して共存していくのがほとんどです。それだけに、いつ再発するか不安がついてまわりますが、その恐怖をみてもらっている主治医や看護師に話す時間は(特に医師が多忙のため)残念ながらないのが現状です。医療は病院に提供してもらい、心のケアは自身が何かの形で行わなければ、がんに打ち勝つことはできません。医療現場の限界を補う方法のひとつががん哲学外来ですが、全国津々浦々に存在し活動を続けているだけに、どこのがん哲学外来を選ぶか迷うことと思います。

 理想のがん哲(カフェ)とはどんなものでしょうか?

 ずばり、選ぶ人のニーズにあったものです。浅草のがん哲カフェに入って4度目の冬を「迎えようとしている私の選択理由はとても簡単でした。元々買い物も直感で選ぶため時間がかからないようにがん哲カフェ選びも即決。といっても、浅草のがん哲カフェしか見ていませんが。台東区在住、家から徒歩数分で毎月カフェに参加できて、がんにまわつる人たちが集まり対話ができ情報交換できる、同年代女子ばかりで皆い~い感じ! じっくり話を聞いてくれる、変なことを言う人は皆無、わさわさしていない、あーだこーだと自分の考えを押しつける人がいない、といった点が気にいりすぐにメンバーに入れていただきました。その時はしりませんでしたが、がん哲学外来の「立ち居振る舞い3箇条」は次の通りです。

○他人の必要に共感すること(自分をおしつけない)
○暇げな風貌(忙しすぎてはならない)
○速効性と英断(いいと思ったらすぐに実行)

 浅草のがん哲カフェは、主宰者の宮本富士子さんが薬局長をつとめている薬局内(以前は、近くのレストランだった)で開催されています(現在はオンライン開催中)が、福井県の「浅井三姉妹記念 福井がん哲学外来」は宗本先生が勤務されている病院内での開催。スタッフは全員医療者ですから、同病院で治療中のがん患者さんにとっては好都合なのではないでしょうか。隣接する他県との北陸3県合同シンポジウムを開催するなどして交流をはかっているそうです。

 宗本先生がリサーチしたがん哲カフェの心理的効果によると、カフェは女性にとっては効果大でしたが、男性には違うアプローチが必要かもしれない、という解析結果だったそうです。分かる気がしますよね! 女性は一般的におしゃべりが大好きな傾向があり、これはストレス解消に大いに貢献しているので私もお薦めします。(あと、悔しい・嬉しい・悲しい時はおもいっきり感情の涙をだすことも)。

 自身ががんに罹患したり大事な人ががん患者になったり、それでも時間は容赦なく流れていきます。コロナが現実味をおびた今年2月時点は安倍首相でしたが、いつしか菅政権に変わっています。コロナ騒動はいつ終わるのか、それとも終わらないのか? 一人あるいは当事者間であれこれ考えすぎて余計なことを思うより、がん哲カフェに足を運び(オンライン開催の時はオンライン参加して)、話す力や聞く力を磨いてはいかがでしょうか。がん哲カフェは、がんと闘う人の本来もっている力を引き出す場所です。

 全国のがん哲学外来主宰者は圧倒的に医療者が多いですが、最近は「臨床宗教師」という肩書きの方の活躍が注目されているようです。

「理想的なカフェとは、地域の風土にあわせた特色ある方法で、支援するにふさわしいスキルを持った人がいることが必須条件。そして各カフェ間の交流があることが望ましい」と宗本先生。

 がんと闘う人たちを支援する役目としてがん哲学外来には「コーディネーター認定制度」があり、現在は126名もの人たちがその任を背負い活動を継続されています。宗本先生はこの認定制度の認定委員長も任されています。

 「がん哲学外来」「がん哲学カフェ」「メディカルカフェ」など様々な使い方をしているので混乱されるかもしれませんが、みながん哲学外来の精神に基づいて展開されています。

 8月には大阪で「大阪がん哲学外来 メディカルカフェあずまや」を開催されている東先生が、コロナ災禍での継続の現状や決意を話されました。今度はどのカフェのお話が聞けるか楽しみです。オンライン開催になって4回目のがん哲カフェ。最初は不慣れだった方々もだいぶ慣れてきて自信がついたのではないでしょうか。

 「私達がオンラインに慣れることで在宅介護の現場の患者さんと医療者をつなぐ役割を果たすことができる。今後もツアーのようにがん哲カフェをオンライン開催していきたい」と宮原さんは意欲的に語りました。

人間、学ぶことに終わりはありませんよね。そして多様性! みんな違ってちょうどいい。違う人が集うから、いろいろな見方・考え方ができる。多様性を心の滋養にしたいですね。

【2020/10/19 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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