勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

2021-12-18 
第12回勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来 シンポジウム感想

 2020年(令和2年)2月、横浜港に停泊中のクルーズ船での新型コロナウイルスによるクラスター発生に端を発した日本国内における新型ウイルスとの闘いは収束することなく、2度目の師走を迎えました。毎年1回師走に開催される恒例の「勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来シンポジウム」(主催/勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来:共催/浅草かんわネット研究会)」は、今年が12年目、昨年に続いてコロナ禍の中、オンライン開催となりました。

 2021年(令和3年)12月18日、寒風ふきすさぶ中、浅草は羽子板市でにぎわいをみせていました。同日、浅草三業会館を会場として講演者と参加者をオンラインでつないだシンポジウムは、昨年同様、人数制限がないため多数の参加者(しかも全国津々浦々)がありました。
  この時点では、感染拡大が少し落ち着いていましたが変異株が不気味な動きをみせているため、引き続き慎重さが必要ということで依然として巣ごもり状態にうんざりしておりました。師走となると一年を振り返り、なんと時間のたつのは早いものかと驚くばかりです。
  ざっと思いつくだけでも、10月初旬、岸田内閣が誕生し、その直後、青森で震度5強を観測する(台東区は震度4)地震が発生し、同月下旬には皇室のプリンセスがご結婚され渡米されました。11月にはいってきた作家の瀬戸内寂聴さんや認知症研究の第一人者・長谷川和夫さんの訃報も衝撃的でした。

 話を戻して、この日のシンポテーマは引き続き、前を向いて未来に向かって生きるために「生きとし命を思い大切にする」。明けない夜はないように、新興ウイルスとの闘いも必ず決着の時がきます。
  講演者は、主に浅草つながりの医療・介護従事者で、苦しかった一年をがんばっている人たちから活動報告をしていただきました。そして、今年の特別講演は順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学主任教授の堀江重郎先生で、「がんを治す」についてお話をいただきました。プログラムは次の通り。

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勝海舟記念下町浅草がん哲学café 1年間の思い出(振り返り)

〇動画メッセージ
  廣橋猛医師(浅草かんわネット研究会理事長・緩和ケア医)  
  安達昌子医師(さくら医院)   
  川田龍平氏(参議院議員)   
  天野良平氏(金沢大学名誉教授/聞き書き活動実践)   
  戸谷剛氏 (子ども在宅クリニックあおぞら診療所墨田院長)

〇基調講演(特別ゲスト 堀江重郎氏/「がんを治す」)

〇音楽の時間(勝海舟記念下町浅草がん哲学外来テーマ曲 「ほっとけ」他/わをん)

〇講和「勝海舟からのメッセージ」(東英子氏(医師)、江川守利氏(がん哲カフェメンバー)

〇クロージングトーク(樋野興夫氏/順天堂大学名誉教授・がん哲学外来主宰)     
  22世紀に向けてのがん哲学

〇音楽の時間(クリスマスの夕べ ソプラノ音楽)

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 コロナ禍では、感染を恐れるあまり普段かかっているかかりつけ医やがん検診を受診しない人が少なくない傾向にあるようです。幾度も声を大にしていいますが、がん治療の基本は、早期発見・早期治療です。ゲストの堀江先生はその傾向をふまえ、助からないと思っていたもののがんに打ち勝った、まさに忘れられないご自身の患者さんの事例をもとにお話をされました。それによると、次の事柄が共通していたそうです。

〇自分で治療を判断・決定

〇生きる意志をもつ

〇必死に笑う(笑いの自然治癒力)

〇鈍感力(ささいなことを気にしない)

 がん哲学外来主宰者の樋野先生もご自身の著書で提唱されていますが、がんと闘うにあたり重要なファクターであると改めて思います。また、バランスのいい食事を心がける、運動・ストレッチ、そして「心が大事」という点も納得します。さらに、がんなどの病気になったら周囲の方々は気をつかってくれますが、してもらうばかりではなく自分からも「与える」ように心がけたいものです。生命や時間を意識するからこそ、人との絆、親孝行・子ども孝行がいとおしい存在に思えてくるものです。

  ところで、2021年の流行漢字は「金」。コロナ制限の中で開催された東京オリンピックでの金メダルラッシュによるものですが、私としては、ワクチン予約に沸いた夏の争奪戦が強烈だったため「争」「狂」が妥当かと思っています。そして、オリンピックの記憶が新しい中、年明けにはすぐに今度は冬季オリンピックが北京で開催されます。東京と同じように見慣れない光景の大会となるのでしょうか?

 毎年一回、がん哲学外来の精神を伝える仲間たちが直に集う場は、またしてもオンライン開催となりましたが、同じところで繋がり語り合える仲間がいることはとても幸福だと感じます。生命の長短はそれぞれですが一人ではない、それぞれが自分の役割をはたし、自分の力が人の役に立つと思うならば、進んでやる……コロナ禍だからこそ、その思いを強く持ちます。
  悲しいことにもう少しで新年がやってくるという頃、女優の神田沙也加さんの転落死が報じられました。早すぎる死に唖然として言葉がでない人が多いのではないでしょうか。 自分らしく勇気をもって生きる!ことは、生命を大切にするという意味だと改めて気づかされました。

【2021/12/18 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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