勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

今日という日を生きる希望 ~生命輝かせて~

 あっという間に6月にはいりました。6月の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、6月最初の月曜日、6月5日夜に開催されました。WHO事務局長が「コロナ緊急事態終了」を宣言してから一か月が経過、もう誰もがコロナが収束したかのように賑わいを取り戻した印象をもちます。
 この日は全国的に30度をこえる夏日を記録するエリアが多数でて、暑さと不快さで早くも冷房を使用した人が少なくなかったようです。しかし、暑さにうんざりするよりも大きな出来事だったのは、政府が強権的に進めている「マイナ保険証」をめぐる動きではないでしょうか。連日トラブルが報道されるにもかかわらず、政府は来年秋に現在の健康保険証を廃止しマイナンバーカードに一体化するなどを盛り込んだ法案を可決させ、依然として立ち止まらずに進めています。
 長寿大国の日本において、制度が改正されるたびに便利さに疎い高齢者が難渋し、彼等をケアする側の人々の手間暇がかかることに思いつかないのでしょうか。私も高齢者施設に入居中の母(認知症)を抱えておりますため、施設側と相談してマイナ保険証の動きを見守っております。

 話をがん哲カフェに戻し、この日は3人の講師がそれぞれの立場からお話しされました。テーマは、柴田綾子医師(淀川キリスト教病院産婦人科医)が「がん哲学外来カフェ運営のヒントと注意点」、スタッフでもある江川守利さんが「勝海舟の言葉から学ぶ」、東英子医師(医師、大阪がん哲学外来メディカルカフェあずまや主宰者)が「歴史上の人物から学ぶ」でした。

 浅草のがん哲カフェ主宰者である宮原富士子さんは、全国各地に存在する「がん哲学外来カフェ」の統括組織である「一般社団法人がん哲学外来」の理事を務めていて、同時に当法人の事務局を担当しています。この法人が主宰する教育講座「哲学で考えるがん教育カフェ」(月一回開催予定)が先月からスタートし、第2回目が6月3日に行われました。共にオンライン開催、3日と5日両日参加した私は深いお話に触れることになりましたため、今回はその話題にも触れたいと思います。
 ちなみに、3日に行われた「哲学で考えるがん教育カフェ」では、実際に愛する娘さんを脳腫瘍で亡くされた坂野貴宏さんが、家族で支えた7年間のがん闘病生活を故人が残した手紙や動画を紹介しながら話してくださいました。
 生きる希望を失わずがんと闘い、限られた時間を生きた娘さん。辛く苦しい日々と向き合うことは痛みの再現となりますが、「記憶」を「記録」したり伝えたりして故人の「生きた証」を残すことは、残された者の今日を生きる希望となることでしょう。苦しみの中でもたくさんのメッセージを家族に残してくれた愛娘の死を受容し、「講演活動をすることで娘と共にいるような気がする」と坂野さんは語ります。

 大事をなした歴史上の人物の生き様や残した言葉の意味を正しく知ることは、がんなどの病に苦しむ人々に勇気や希望を与えてくれます。その人の経験から出た言葉だからこその言霊が人の心に響くのでしょう。
 この原稿を書いていた(6/8)、関東地方は梅雨入りしました。春に夏日があったり、一日の寒暖の差が10度以上ある日があったり、日本列島の各地で地震が頻発したり、台風の影響で大雨警報がでたり、自身の健康管理だけで忙しいのに自然との付き合いも大変、いつの間に雨の季節となったのだろうと驚くばかりです。
 歴史的セレブたちは偉業をなしたからこそ歴史に名を残すこととなったのですが、歴史はいつの世も強者の手によって残されてきたのも事実。当然のごとく、歴史の闇にうもれてしまった人もいることでしょう。

 名もなき人々の思いに目を向けること、がんなどの病と闘い、かけがえのない日々・未来を生きるチャンスを奪われた人々(見守った人々も含む)が残してくれた贈り物を忘れないことは大事な事ですよね。
 今回はタイトルが思いつかず苦労しました。そんな時、月9の人気ドラマ、キムタクさん主演「風間公親 ―教場0―」の主題歌「心得」の美しい詩の一部を参考にさせていただきました。シンガーソングライターのUruさんの心の奥深く静かに染み渡る優しい歌声は圧巻、こんな風に人の心に贈り物を届けられたらと思います。

※一般社団法人がん哲学外来 http://gantetsugaku.org/learning/

【2023/6/13 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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