勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

置かれた場所で、言葉とともに生きてゆく

 今年も逃げるように2月が過ぎ、3月にはいり日本各地で卒業式シーズンとなりました。先日、浅草寺に行きましたら着飾った若い女性たちで溢れていました。3月になった途端、人気漫画家の訃報をはじめ特筆すべきニュースが盛りだくさんでしたが、やはり関心を集めたのはメジャーリーグの大谷選手のおめでたい話題ではないでしょうか。日本が誇る世界的野球選手は球場の中でも外でも話題になりますが、遂にファンが一番(おそらく)聞きたかった結婚話が登場してしまいました。結婚相手は、日本人女性で、一般の人、という説明だけだったものですから、たちまちネットで話題沸騰してしまいましたよね。大谷選手が記者会見をしている時、私のラインにはお相手の女性絡みのメッセージが次々に送られてきました。ともかく、おめでたいことですから、末永くお幸福に!と願うばかりです。

 立派な実績を残したアスリートたちの言葉は忘れがたいものばかりですが、大谷選手も二刀流の実力だけでなく、すばらしい結果に裏打ちされた名言を数多く残しています。その中で私のお気に入りは、
「(人気メジャーリーガーを)憧れるのをやめましょう。今日トップになるために来たので」です。
  → 2023年WBC決勝前の円陣の声出しの時に発した言葉で記憶に新しいですよね。相手が自分より優れているからといって憧れの気持ちが強いと恐縮して対等に戦えないものです。闘いを挑む時は無の境地になることが大事です。

 政治家の失言(セクハラ・パワハラなどのとんでも発言、名前の間違いなどの単純ミス)が目立つだけに、言葉の持つ力を大切にしている(?)大谷選手の言葉は、その爽やかな姿や生き方もあいまって、本当に感動的です。

 3月の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン 哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、3月4日夜に開催されました。この日のがん哲カフェでは、がん哲学外来が運営にあたり大事にし、HPなどで発信し続けている「言葉の処方箋」について意見交換しました。
  私ががん哲カフェを初めて訪れた時(2016年12月)、目の前にがん哲学外来主宰者である樋野興夫さんの著書がずらりと並んでいて、メンバーがそろうまで読んでいました。どの著書にもたくさんの「言葉の処方箋」があり、それらは様々な出来事が押し寄せるようにおこり八方ふさがり状態だった私の心に、ストレートに届くものばかりでした。
  中でも、出口のみえない闘病期間の支えとなったのは、樋野先生の著書の中で触れてあるもので、すとんと腑に落ちることができ心が軽くなっていくのを実感できたものです。

〇明日この世を去るとしても、今日の花に水をやる
→ 不幸や不運に見舞われると、絶望的になり色々なことがどうでもよくなってしまいがちです。自分を癒してくれる花の美しさに気づく余裕もなく過ごすのではなく、今日という日をしっかり生きることの大切さを教えてくれます。

〇その日の苦労は、その日だけで十分である
→ 治療がうまくいかないと心配ばかりして、その結果、起こってもいないことを考えて疲れてしまいます。悪循環に陥らないように、取り越し苦労することの虚しさ、今を生きることの大切さを教えてくれます。 人の生き方は十人十色。それだけに、感じ方や響き方はちがってきます。全国から参加したメンバーは、どんな言葉に感動してきたのか、フリートークでの回答は次の通りでした。

〇鳥は飛び方を変えられないが、人間は生き方を変えることができる
(日野原重明氏の言葉)

〇人生いばらの道、されど宴会

〇置かれた場所で咲きなさい

 浅草のがん哲カフェ主宰者である宮原富士子さんは、「がん哲学外来」の事務局を担当されているため、これまで「がん哲学外来」が発信してきた言葉の処方箋を、今後も充実させていく方針です。古今東西、様々な人々が残した名言を紹介、またメンバーによるオリジナルをも紹介していきますので関心をお持ちいただける方は是非アクセスしてください。 

※一般社団法人がん哲学外来 「きょうのことばの処方箋」
https://gantetsugaku.org/kotoba/

 3月のがん哲カフェから一週間後、この原稿を書いています。この日は、「東日本大震災」(3・11)が発生した日で、あれから13年という月日が経過しました。【戦後最大の大震災】でしたが、その後、日本各地で大きな地震が発生したため、忘れられた(?)災害になっているようで心が痛みます……。

同日、米アカデミー賞授賞式が行われ世界各国でTV中継されました。私は、同日夜、ダイジェスト版をみましたが、日本の作品が長編アニメ賞(「君たちはどう生きるか」/宮崎駿監督)と視覚効果賞(「ゴジラ-1.0」/山崎貴監督)に輝き喜んでおります。いつの頃からか、3月にオスカー授賞式(アカデミー賞)をみるのが当然になっている私にとって、一番の関心事は受賞者のスピーチの内容です。
  もちろん、事前にスピーチ原稿を準備されているのでしょうが、選ばれるにふさわしい人たちが発する言葉には力が宿っていることに気づかされます。世界中の人々や世界を動かすには、少なくても真摯な言葉であれば十分だということを教えてくれます。

 今回は、<原爆の父>と呼ばれた物理学者を描いた「オッペンハイマー」が作品賞など7部門を制覇するなど、全体的に戦争を描いた作品が評価されたようです。自然災害に戦争、原稿を書きながらオスカーの行方を気にし大震災がおきた時間に黙祷、夜のニュースはオスカー授賞式と「3・11」が半々でした。
 お金がなくて大切な人に贈るものを買うことができなくても、自身の学びや経験から得た人の心を打つ言葉を贈ることはできます。今回のがん哲カフェは、私たちはどう生きるべきか、改めて考える時間となりました。

※一般社団法人がん哲学外来
https://gantetsugaku.org/

【2024/3/4 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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